2026年熊本地震をきっかけに知っておきたいドローン防災の基礎知識 ~災害時にドローンは何ができる?
長谷川祐亮
熊本東区で活動するCMドローンアカデミーの長谷川です。
このたびの熊本地方を震源とする地震により被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
また、救助活動や復旧作業に尽力されている自治体・消防・警察・自衛隊・医療関係者・ボランティアの皆様に、深く敬意を表します。
本記事は、今回の地震をきっかけに防災や災害対応について考える一助となればという思いから執筆しています。災害を話題にすることが目的ではなく、災害時にドローンがどのような役割を果たし、私たちの安全や命を守るためにどのように活用されているのかを知っていただくことが、本記事の目的です。
地域に根ざしたドローンスクールとして、少しでも皆様のお役に立てる情報をお届けできれば幸いです。
日本は世界有数の災害大国です。地震だけでなく、豪雨や台風、土砂災害など、毎年のように自然災害が発生しています。そうした災害対応において、近年急速に活用が進んでいる技術の一つが**ドローン(無人航空機)**です。
以前は「空撮を行うための機材」というイメージが強かったドローンですが、現在では被災状況の確認やインフラ点検、行方不明者の捜索支援など、人命救助や復旧活動を支える重要なツールとして期待されています。
今回の熊本地震でも、今後の復旧・復興に向けてドローンが果たす役割はさらに大きくなるでしょう。
本記事では、災害時にドローンがどのような場面で活躍するのか、実際の活用事例や飛行ルール、災害対応に必要な知識について、ドローンの専門家の視点から分かりやすく解説します。
災害時にドローンが注目される理由

災害直後は「情報」が人命を左右する
大規模な地震が発生すると、最初に求められるのは被害状況を正確かつ迅速に把握することです。
しかし実際の災害現場では、
道路が寸断されている
土砂崩れが発生している
建物倒壊の危険がある
停電によって通信手段が限られている
などの理由から、人がすぐに現場へ近づけないケースが少なくありません。
そこで大きな力を発揮するのがドローンです。
ドローンは短時間で離陸し、上空から広範囲を撮影できます。取得した映像はリアルタイムで災害対策本部へ共有できるため、救助活動や避難誘導、復旧計画の判断材料として活用されます。
災害時には一刻も早い情報収集が人命救助につながります。だからこそ、迅速かつ安全に情報を集められるドローンへの期待は年々高まっています。
二次災害のリスクを減らし、安全な救助活動を支える
倒壊した建物や土砂災害の現場では、余震や二次崩落による危険が常に伴います。
そのような場所へ救助隊が入る前に、ドローンを飛行させることで、
建物の損傷状況
崩落の危険性
火災の発生状況
ガス漏れの可能性
周辺道路や障害物の状況
などを安全な場所から確認できます。
これは被災者を救うだけでなく、救助活動を行う人々の安全を守ることにもつながります。
近年では赤外線カメラや高倍率ズームカメラを搭載したドローンも普及しており、夜間や目視では確認が難しい場所の調査にも活用されています。
災害現場ではドローンはどのように活用されているのか?

災害時のドローンは、単に空から映像を撮影するだけではありません。近年では、自治体や消防、自衛隊、警察、インフラ企業など、多くの機関がドローンを導入し、迅速な情報収集や復旧活動に役立てています。
ここでは、実際に災害現場で行われている代表的な活用事例をご紹介します。
被害状況を迅速に確認し、初動対応を支援
災害発生直後は、被害の全体像をできるだけ早く把握することが重要です。
しかし、道路の寸断や建物の倒壊などにより、人が現場へ近づけないケースも少なくありません。
そのような状況でも、ドローンであれば短時間で上空から広範囲を撮影し、リアルタイムで映像を共有できます。
例えば、
建物倒壊の範囲
火災の発生状況
浸水エリア
道路の損傷状況
河川の氾濫状況
などを迅速に確認できるため、災害対策本部では救助活動の優先順位や避難指示の判断材料として活用できます。
従来はヘリコプターによる調査が中心でしたが、ドローンは低コストで迅速に運用できることから、多くの自治体でも導入が進められています。
土砂災害や河川の状況を上空から調査
熊本県は地震だけでなく、集中豪雨による土砂災害や河川の氾濫も発生しやすい地域です。
土砂災害の現場では二次崩落の危険があるため、人がすぐに立ち入ることは非常に危険です。
そのため、まずドローンを飛行させ、
崩落範囲
土砂の流出状況
流木の堆積
河道閉塞(天然ダム)の有無
新たな崩落の危険箇所
などを上空から調査します。
撮影したデータを三次元(3D)化することで、土砂の流出量や地形の変化を把握しやすくなり、復旧工事や防災計画にも活用されています。
行方不明者の捜索や孤立集落の安否確認にも活躍
災害時には、行方不明者の捜索や孤立した地域の安否確認も重要な任務となります。
ドローンは広範囲を短時間で飛行できるため、人が徒歩で捜索するよりも効率的に状況を確認できる場合があります。
また、赤外線カメラを搭載した機体では、周囲との温度差を利用して人の存在を確認できるケースもあり、夜間や視界の悪い環境での捜索支援にも活用されています。
さらに、道路が寸断された地域では、住民の安否確認や被害状況の把握にもドローンが役立ちます。
被災地全体の状況を早期に把握することは、救援物資の搬送ルートや復旧計画を立てるうえでも重要な情報となります。
災害時にドローンは自由に飛ばせるのか?

「災害が起きたのだから、ドローンで現場を撮影して情報発信をしたい」と考える方もいるかもしれません。
しかし、災害時だからといって誰でも自由にドローンを飛ばせるわけではありません。
むしろ、大規模災害が発生した際には、通常時以上に安全管理や法令遵守が求められます。
善意で飛行させたドローンであっても、救助活動やヘリコプターの運航を妨げてしまう可能性があるためです。
そのため、災害時にドローンを運用する際には、航空法をはじめとしたルールを正しく理解しておく必要があります。
災害時でも航空法などの飛行ルールを守る必要がある
日本では、ドローンの飛行は航空法をはじめとするさまざまな法令によって定められています。
災害時であっても、
人口集中地区(DID)での飛行
夜間飛行
目視外飛行
人や建物との距離の確保
などについては、原則としてルールを守らなければなりません。
また、飛行場所によっては自治体や施設管理者の許可が必要になる場合もあります。
「人助けのためだから大丈夫」と自己判断して飛行させることは、大きな事故や法令違反につながる可能性があります。
緊急用務空域とは?災害時に設定される飛行禁止エリア
大規模な災害が発生すると、国土交通大臣が「緊急用務空域」を指定することがあります。
緊急用務空域とは、消防・警察・自衛隊・海上保安庁などの航空機が、救助や消火活動を安全に行うために設定される特別な空域です。
この空域では、原則として一般のドローンは飛行できません。
もし無許可で飛行させてしまうと、
救助ヘリとの接触リスク
救助活動の中断
人命救助の遅れ
など、重大な影響を及ぼすおそれがあります。
そのため、災害時には飛行前に国や自治体から発表される情報を確認することが重要です。
被災地で無断飛行をしてはいけない理由
近年は高性能なドローンが身近になり、個人でも簡単に空撮ができるようになりました。
しかし、被災地での無断飛行は、多くのリスクを伴います。
例えば、
救助活動の妨げになる
被災者のプライバシーを侵害する
報道ヘリや防災ヘリの飛行を妨げる
二次災害を引き起こす可能性がある
といった問題が考えられます。
また、災害直後は電線の断線や通信設備の損傷など、目視では確認できない危険も存在します。
操縦者自身が危険な状況に巻き込まれる可能性もあるため、「飛ばせるかどうか」ではなく、「飛ばすべき状況かどうか」を慎重に判断することが大切です。
災害対応に国家資格は必要なのか?
近年、ドローンの国家資格制度が始まり、「災害対応には国家資格が必要ですか?」という質問をいただくことが増えました。
結論から言えば、すべての災害対応で国家資格が必須というわけではありません。
しかし、災害時には通常よりも高度な操縦技術や安全管理能力が求められるため、国家資格を取得し、継続的な訓練を積んだ操縦者が活躍する場面は今後さらに増えていくと考えられます。
国家資格”無人航空機操縦士”が求められる場面とは?
災害現場では、
狭い場所での飛行
障害物の多い環境での飛行
長時間のミッション
関係機関との連携
など、高い操縦技術と安全管理能力が求められる場面があります。
国家資格制度では、単に機体を飛ばす技術だけではなく、
航空法などの関連法令
リスクアセスメント
緊急時の対応
安全な運航管理
などについても体系的に学びます。
そのため、災害対応を視野に入れる場合には、国家資格取得を目指すことも有効な選択肢の一つです。
資格だけでなく、実践的な訓練が重要
一方で、資格を取得しただけで災害対応ができるわけではありません。
実際の災害現場では、
強風
雨上がりの不安定な環境
限られた離着陸スペース
刻々と変化する状況
など、通常の練習環境とは異なる条件で飛行することになります。
そのため、平時からさまざまな環境を想定した訓練を行い、安全な飛行技術を身につけておくことが重要です。
ドローンは非常に便利な技術ですが、その能力を最大限に発揮するためには、「資格」「知識」「経験」の3つが揃って初めて、安全で確実な運用が可能になります。
熊本でドローン防災を考える重要性とは?

地震だけでなく豪雨災害にも備えることが大切
熊本県は、地震だけでなく、梅雨時期の集中豪雨や台風による土砂災害など、さまざまな自然災害が発生する地域です。
2016年の熊本地震では広い範囲で甚大な被害が発生し、その後も豪雨による河川の氾濫や土砂災害が各地で発生しています。
2026年7月28日に起きた熊本地震も含め、私たちは「災害はいつ起きてもおかしくない」という現実と向き合う必要があります。
だからこそ、災害が発生してから対応を考えるのではなく、平時から防災について学び、備えておくことが重要です。
ドローンもその備えの一つです。
災害時に正しく運用できる人材が地域に増えることは、将来の防災力向上にもつながります。
平時の訓練が有事の対応力につながる
ドローンは高性能な機体であっても、操縦者が適切に運用できなければ、その性能を十分に発揮することはできません。
災害現場では、
安全な飛行経路の判断
周囲の状況確認
関係機関との連携
法令を遵守した運航
など、多くの知識と経験が求められます。
こうした能力は、一朝一夕で身につくものではありません。
日頃から正しい知識を学び、さまざまな環境で飛行経験を積み重ねることで、初めて有事にも落ち着いて対応できるようになります。
また、防災は一部の専門家だけが担うものではありません。
自治体や企業、地域住民がそれぞれの立場で防災意識を高めることが、災害に強い地域づくりにつながります。
CMドローンアカデミーが目指す人材育成
九州は熊本で活動するCMドローンアカデミーでは、国家資格取得のための講習だけでなく、安全運航に必要な知識や実践的な操縦技術の習得を重視しています。
ドローンは、空撮や点検、測量、農業など幅広い分野で活用されていますが、その活躍の場は災害対応や防災分野にも広がっています。
私たちは、資格を取得することをゴールとするのではなく、安全に運航できる操縦者を育成することを大切にしています。
熊本は約10年前の熊本地震で大きな被害を経験し、そして今回、再び地震に見舞われました。
同じ地域で再び大きな災害を経験した今だからこそ、防災への備えや災害対応の重要性を改めて考える機会になった方も多いのではないでしょうか。
私たちは、ドローンの可能性や正しい運用方法について知っていただくことが、地域の防災力向上や、将来の災害に備えるための一助になると考えています。
まとめ|ドローンを正しく活用し、防災力の向上につなげよう

災害時のドローンは、被害状況の把握やインフラ点検、行方不明者の捜索支援など、多くの場面で活躍しています。
一方で、災害時には航空法をはじめとする法令や安全管理を十分に理解し、適切に運用することが欠かせません。
ドローンは「飛ばせる人」が増えるだけでは十分ではなく、「安全に、責任を持って運用できる人」が増えることで、その価値を最大限に発揮できる技術です。
今回の熊本地震をきっかけに、防災について改めて考える方も多いのではないでしょうか。
私たちは、このような時だからこそ、防災に役立つ知識や技術を正しく伝えていくことが、地域に根ざしたドローンスクールとしての役割の一つだと考えています。
ドローンは、空撮やビジネスだけでなく、人の命を守り、地域の安全を支える技術として、今後ますます重要性を増していくでしょう。
災害はいつ起こるかわかりません。しかし、平時から正しい知識を身につけ、備えておくことで、有事の際に冷静な判断と行動につなげることができます。
CMドローンアカデミーでは、国家資格講習をはじめ、安全運航に必要な知識や実践的な操縦技術を学べる講習を実施しています。
ドローンを仕事に活かしたい方はもちろん、防災や地域貢献に関心のある方も、ぜひお気軽にご相談ください。
